「リワークに通っているけど意味ある?」
「リワークに通っているけど、しんどいだけで意味ある」
会社を休職し、復職を考えた際に利用を検討するリワークプログラム。
中には会社に命じられて利用している方も多いかと思います。
しかし、実際に通っている方の中には、
「リワークは本当に意味があるんだろうか…」
と悩んでいる方も多いかと思います。
そこで、実際に大阪府・兵庫県指定のリワーク施設として
7年間、運営している当校が
実際のデータを元にリワークの意味について解説していきます。
今リワークに通っている方やこれからリワークに通う予定の方、
そして、人事部の方は参考にしていただけましたら幸いです。
リワークを受講するにあたって一番の意味は
再休職させない点にあります。
例えば、うつ病においての再発率は通常60%にもなります。
参考:厚生労働省「資料1: うつ病について」
従って、本人が治ったと思って会社に復帰しても半分以上の確率で
また休職する形となります。
しかし、リワークを受講した場合の再休職のリスクが大幅に下がる事が科学的に証明されています。
そのため、会社側としても積極的に休職者にリワークを進めている現状があります。
次項より、リワークの有無による再休職リスクを見ていきましょう。
2012年度の調査(第19回日本産業精神保健学会)で、実際に会社を休職した方うつ病患者90人を対象に
リワークプログラムを利用した群(45人)、利用しなかった群(45人)で
リワークの有無による1000日後(3年弱)の就労継続性について調査されました。
3年後改めて何人の方が休職しているか?といった調査です。
結論として
リワークを利用した人達は3年後も7割が働き続けていたのに対して、
リワークを利用しなかった群は2割以下しか働き続ける事ができませんでした。
さらに、フォローアップと言われる復職後のサポートも入れると9割の方は再休職せずに働き続ける事ができました。
リワークを利用しなかった群については、うつ病の再発率60%以上という観点から考えると、何もしなければ再休職してしまうことがわかるかと思います。
再休職リスクの観点から約2倍以上の差があることがわかります。
では、実際にどのような条件になれば復職を許可して良いのか?
ここについては復職の条件が国により定められており、
私たちリワーク施設は、この条件をクリアできるようにプログラムを組む必要があります。
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
(平成16年10月14日公表、平成21年3月改訂)
労働基準局安全衛生部労働衛生課
例えば、”適切な睡眠覚醒リズムが整っている事”
においては、以下のようなアプローチを行います。
“業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している事”においては、
など、あくまでも自由にプログラムを設定しているわけではなく、
復職の適切な条件に沿って、厳密に条件を把握していきます。
これにより、リワークを利用される方がどの程度復職職に近づいているか
把握できるメリットもあります。
それでも、リワークがかなり辛く感じることもあるかと思います。
まず大前提として、
リワークはしんどいです。
さらに、しんどいと感じる時期はほとんどの方にとって同じ時期となります。
その時期とは、リワークの開始直後です。
というのも、リワークを受ける時期は主に急性期で自宅療養を経て、回復期の時期となります。
そのため、休職前は当たり前にできていたことであっても
自宅療養で体力の落ちた体で、行うと
想像以上にしんどく感じるのです。
これは誰もが通る道となります。対処方法としては、少しずつ始めることです。
リワーク施設によってはいきなり、週5回の通所を強いる所もありますが、
私たちのスタンスとしては否定的です。
何よりも、まずは一歩を踏み出すことを検討することが良いでしょう。
リワークを辞めたい時は二つにパターンがあります。
一つ目は、選んだリワーク施設が厳しすぎること。
リワーク施設によっては、かなり厳しい所もあると思います。
この場合は、施設を変えることを検討しても良いかと思います。
リワークの目的は再休職リスクを減らすことにあります。
従って、リワーク中に精神的に辛い思いをして
結果、そもそも復職もままならない場合は本末転倒です。
ですので、途中で中断し新しくリワーク施設を探すことも一つの手段です。
もう一つは、完全に回復しきってないのに、焦ってリワークを始めてしまうことです。
この場合は、状態をより悪化させることに繋がりかねないので、
しっかりと主治医に現状を相談したのち、自宅療養を行うべきでしょう。
では、リワークの標準的な期間について解説致します。
まず、リワークの受講期間は人によって異なるという事だけ留意してください。
平均的な期間のデータはありませんが
参考までに国が行うリワークである
地域障害者職業センターのリワークにおいての標準的な期間は4ヶ月となっております。
期間の内訳については
コーディネート期間と呼ばれる期間が1.5ヶ月から2ヶ月
この期間ではリワークを進める前段階として主に以下の3つのポイントの調整を行います。
コーディネート期間が終了し、実際のリワークプログラムに突入します。
概ね2ヶ月を想定しリワークプログラムを実施されます。
さらに、職場復帰後もフォローアップとして
定期的な支援を行います。
当校の場合も、平均期間が4ヶ月として
復職後のフォローアップ期間として6ヶ月間のサポートを行っております。
短期間でのリワークの利用については、もちろん意味はあります。
前述したように、まずは自宅療養を経た体にとって
どの程度、体力や集中力が落ちているか
自身のイメージとのギャップに気づくこともできます。
また、第三者の視点で
復職条件をクリアしていないポイントについても明確になります。
最初は短期間のつもりでも良いので、リワーク施設を尋ねてみることをおすすめします。
その上で、通うかどうか決定するのも良いかと思います。
リワークにずっと通っているが、中々復職できない場合は注意が必要です。
主に二つのパターンがあり、
一つ目は、ある特定の条件がクリアできない場合です。
この場合は、医師や支援スタッフと
改めての課題の把握と重点的にそのポイントをクリアできるようにすると良いでしょう。
問題なのが二つ目で、リワーク施設側で明確に復職条件を設定できていない場合です。
この場合は注意が必要で、
現在、民間のリワーク施設が非常に多くなっております。
ですので、リワーク施設の入所前に以下の3点を必ず確認するようにして下さい。
まず、実際に復職支援を行なった実績があるかどうかです。
Webサイト上では、復職支援を謳っているが
実態はほとんどないといったリワーク施設もあります。
実績がないと復職後のフォローアップも経験が浅く、上手くいかない場合もあります。
必ず、実績を確認して下さい。
二つ目はこの記事で解説してきた復職条件を明確にしているか?という事です。
リワークはただでさえしんどい上に復職条件が明確でないと、いつ終わるのか復職のイメージが描けず精神的にかなりきつくなります。
三つ目は、プログラムの内容です。
自身が休職に至った原因に対処できるようなプログラムを吟味する必要があります。
自身にあった最適なリワークプログラムを選択するようにして下さい。
ここで気になるのが、リワーク期間中の給与になります。
まず前提として、休職中の方は傷病手当金にて生活をされている方がほとんどかと思われますが、
この時、リワーク期間中に会社から手当などが出ると
傷病手当金からその金額が差し引かれた形で支給されます。
例えば、月給21万円の方が傷病手当として月額約14万円の給付が行われていたとします。
この時、
会社が独自にリワーク期間中の手当として5万円を支給したとすると
傷病手当は5万円を差し引いて、9万円の支給となります。
ですので、リワーク期間中に給与が出てもあまり
あまり意味がないことになります。
参考;協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
精神疾患のリワークにおいて、上司からのパワハラなどで休職に至った場合もあるかと思います。
この場合においても、一旦、傷病手当金を申請することをおすすめ致します。
原則、労災と傷病手当金は同時に受給することはできません。
しかし、傷病手当金受給中でも、労災の申請を行うことはできます。
というのも、労災と傷病手当金では労災の方が受給額が多く
(約8割)医療費の負担もありません。
さらに、傷病手当の場合は最大1年6ヶ月という期限がありますが、労災の休業補償についてはありません。
しかしながら、精神疾患の労災認定率は約3割と非常に低い水準となっております。
従って、目下の生活費のことを考えても、一旦は傷病手当金にて生活するようにしましょう。
参考:厚生労働省「令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」「労働災害が発生した時」
それでは、リワークのメリットとデメリットの方にも触れてみたいと思います。
やはり、最大のメリットは再休職リスクを抑えられる事にあります。
リワークプログラムには、必ず認知行動療法など自身が休職に至る認知の癖を修正するプログラムなどが行われます。
また、適応障害の方においては
ある環境において起きる、好ましくない反応を矯正するプログラムも行われます。
ほとんどの場合、休職は突然起こるわけではなく
自身が仕事や社会生活を行う対処の方法が引き起こしていたことによります。
精神疾患は非常に再発率が高いです。
これから先の人生を長期的に考えた時、安定して仕事ができるように
なるだけ再発させないように
一度、立ち止まって考えることも重要かと思います。
それでは、リワークの最大のデメリットは費用面です。
例えば、クリニックが行うリワークや私たちのような就労移行支援が行うリワークであっても費用が発生します。
それでも、ほとんどの費用はクリニックであれば健康保険、私たちのようなリワーク施設(就労移行支援)では、公費により補われますが
それでも、前年度の収入に合わせて市町村に支払う必要があります。
参考までに、当校のリワークの費用を挙げておきます。
自己負担額の一覧は4つにわかれています。詳しくは以下の通りです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限金額 |
---|---|---|
生活保護世帯 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※注1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得税16万※注2未満) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外※注3 | 37,200円 |
上記のような料金体系となります。
*注1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
*注2:前年度収入が概ね300万以上~600万円以下の世帯が対象になります。
個人市・府民税 非課税限度額・所得割非課税限度額の一覧表
区分 | 同一生計配偶者および扶養親族の人数 【なし】 | 同一生計配偶者および扶養親族の人数 【1人】 | 同一生計配偶者および扶養親族の人数 【2人】 | 同一生計配偶者および扶養親族の人数 【3人】 | 同一生計配偶者および扶養親族の人数 【4人】 | |
---|---|---|---|---|---|---|
個人市・府民税 非課税限度額 | 前年の合計所得金額 (給与収入金額) | 45万円以下 (100万0,000円以下) | 101万円以下 (156万0,000円以下) | 136万円以下 (205万9,999円以下) | 171万円以下 (255万9,999円以下) | 206万円以下 (305万9,999円以下) |
所得割 非課税限度額 | 前年の総所得金額等 (給与収入金額) | 45万円以下 (100万0,000円以下) | 112万円以下 (170万3,999円以下) | 147万円以下 (221万5,999円以下) | 182万円以下 (271万5,999円以下) | 217万円以下 (321万5,999円以下) |
(注)5人以上の場合は、合計所得金額(206万円)または総所得金額等の合計額(217万円)に1人につき35万円を加算した金額以下
しかしながら、これからの長い人生を考えた時に
再発のリスクと費用面を照らし合わせながら検討すると良いでしょう。
それでは、リワークを体験したことのない方に向けて
実際の当校のリワークの風景を元にリワークプログラムの流れを解説致します。
まずはどのような経緯で休職に至ったか?
ご本人様や、主治医、希望に応じて上司の方から情報を集約し
どのようなリワークプログラムを策定するか決定致します。
また復職までの期間のご本人の希望や、復職条件の提示。
どのようなところを重点的にサポートするかを様々な角度から検討します。
実際に、復職支援プログラムを行なっていきます。
課題に合わせて以下のようなプログラムを実施します。
(理学療法プログラムの様子)
(仮想オフィスプログラムの様子)
(SSTの様子)
プログラムは一度、策定して終わりではなく
リワーク期間中、定期的に面談し見直し行います。
復職後のフォローアップとなります。
希望があれば、定期的に当施設の職員が会社訪問させて頂き、無理なく働けているか?
休職に至った同じような状況に至っていないかを確認します。
いかがでしたでしょうか?今回はリワークの意味についてデータを元に解説させて頂きました!
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