精神疾患や発達障害などを抱える方や、就労経験が少なく、一人での就職が難しい方々に向けた障害福祉サービスが「就労移行支援」です。
このサービスを利用するにあたり、平均的な利用期間や延長の方法について詳しく知りたいという声を多くお聞きします。
本記事では、就労移行支援の利用を考えている方、または現在利用中で利用期間の終了が近づいている方に向けて、
支援の平均利用期間や延長方法、リセットの条件などについて徹底解説していきます。
就労移行支援は、精神疾患や発達障害、知的障害、身体障害を抱えた方が一般就労や障害者雇用での就労を目指すための職業訓練所のような施設です。
国や各自治体によって指定された障害福祉サービスの一つで、「障害者総合支援法」に基づいて運営されています。
この制度の目的は、障害を持つ方が就労に向けて必要なビジネスマナーや自己の特性理解などのスキルを習得し、就職やその後の職場定着を支援することにあります。
精神的、身体的な特性を持つ方が、安心して就職活動に取り組むためのサポートが得られる貴重な福祉制度です。
就労移行支援を利用できるのは、
障害や難病を抱える65歳未満の方です。対象となる障害には、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害などが含まれます。
重要な点は、障害者手帳の取得が必須ではない点です。
医師の診断書等があれば利用可能であり、手帳の有無に関わらず支援を受けることができます。
就労移行支援の最大利用期間は原則として2年間(24か月間)です。
この2年間の間に、就職に向けて必要なスキルや経験を身につけ、体調を整えながら就労に向けた準備を行います。
就労移行支援の利用期間の上限が最大2年間と定められている理由は、貴重な2年間を無駄に過ごさないようにするためです。
就労移行支援以外の就労系福祉サービスでは、利用期間の上限が定められていません。
その理由は利用目的に社会貢献が含まれているためです。
ですが、就労移行支援の利用目的は就職をし、働き続けられるようになることです。
そのため、通い続けるためのサービスではなく、あくまでも就職のための通過点として利用していただく障がい福祉サービスとなっております。
利用期間の期限が定められていないと、最初はやる気に満ち溢れている利用者の方でもだんだんと就職に対するモチベーションが下がってしまうケースが見られます。
また、体調が整っていない状態で就労移行支援を利用してしまうと、
就職活動を無理に進めてしまい、仕事についたとしても再び体調を崩してしまい、
休職や退職となってしまい、就労移行支援に来る前よりも体調が悪くなってしまっては本末転倒です。
ある程度体調が整い、焦らず自身の特性と向き合い少しずつでも通所回数を増やし、就職を目指し、
巣立っていくためのステップとして利用していただきたいため利用期間の上限が2年間と定められています。
それでは、就労移行支援を実際に利用されている方の平均的な利用期間は、どのくらいなのでしょうか?
そもそも、原則の2年間で足りているのでしょうか。
最新の情報ではありませんが、平成29年度では就労移行支援事業所を利用された方の中で就職された方の平均利用月数は15.9ヶ月です。
2年以上利用された方の割合は5.9%(36,607人中2,178人)です。
【出典】社会福祉施設等調査(厚生労働省)、平成30年度障害者総合福祉推進事業 就労移行支援事業所における効果的な支援と就労定着支援の実施及び課題にかか わる調査研究(PwCコンサルティング合同会社)
また、就労移行支援With Youの平均利用期間は半年から9ヶ月程です。
特に体調が比較的安定している方は、この期間内に就職を目指すことが多くなります。
中には復職を目指す方や、早期に職場に復帰できる方は、1〜3ヶ月の短期間で就職を実現されることもあります。
しかし、状況により2年間の支援をフルに活用するケースもあり、個々の事情に合わせた支援が行われています。
就職はあくまでもスタートラインですので、早く就職をすることよりも就職後安定して働き続けることが大切です。
ですので、一人ひとりのペースに合わせて焦らずに利用されることを推奨しています。
最短期間の場合は、復職の方や、就職先は決まっていたが、就職するまでの期間に利用されたい方や、
就職後の定着支援を利用されたい方の場合は1ヶ月〜3ヶ月程の短期間で就職される方もいらっしゃいます。
最長期間の場合は原則上限の2年間から1年延長し2年10ヶ月程の利用期間の方もいらっしゃいます。
就職までの道のりは人それぞれですので、一概に早ければ良い、遅ければ悪いと言うものではありません。
東京福祉局の就労移行支援事業所、利用期間調査結果によると
就職までの一般的な期間は以下の通りです。
令和3年度実績
利用期間 |
就職者数 |
構成割合 |
6か月未満 |
294 |
13.0% |
6カ月以上1年未満 |
554 |
24.5% |
1年以上1年6か月未満 |
539 |
23.9% |
1年6か月以上2年未満 |
503 |
22.3% |
2年以上 |
369 |
16.3% |
合 計 |
2,259 |
100.0 |
東京福祉局令和4年度 就労移行等実態調査 結果概要
また、最近の企業の動向では、就労移行支援を半年以上利用された方を採用したいと言われる企業も出てきています。
採用後の安定した就労を見据えて下さるのはありがたいことですね。
このことも、6ヶ月以上利用された方の就職者数が多い要因の1つではないでしょうか。
就労移行支援事業所を利用後、就職された場合は、そこから6ヶ月間の定着支援が行われます。
定着支援の方法は就職先や、利用者の方の要望に合わせて様々な形がありますが、一般的には職場での不安や困りごとなどをいつでも相談が可能です。
直接企業と三者面談を行うケースや、お昼休み時間に電話、月に一度事業所での面談などが行われます。
また就労移行支援での定着支援は6ヶ月間ですが、それ以降もサポートが必要な場合は、
就労定着支援事業所や障害者就業・生活支援センターなどに引き継ぎ、定着支援を受けることができます。
就労定着支援とは、冒頭でお伝えしました、就労系福祉サービスの1つです。
就労移行支援事業所で就職し、6ヶ月間の定着支援を受け、その後さらに定着支援を受けることができます。
就労定着支援サービスの利用期間は最長で3年間です。
毎月担当の支援員と会い、状況を確認し、6ヶ月ごとに就労定着支援計画を作成し、職場定着の支援を専門的に受けることができるサービスです。
また、3年を超えた場合は障害者就業・生活支援センターなどの地域の支援期間に引き継いでいきます。
就労移行支援は原則として2年間の利用が可能ですが、期間が残っている状態で退所された場合などは残っている期間再利用できる場合があります。
また、就労移行支援を一度利用して就職した後、再度利用する必要が生じた場合は利用期間がリセットされるケースもあります。
また2年間利用終了後も、場合によっては延長が認められることもあります。
2年間の支援期間内に就職が難しい場合、利用期間の延長を申請することが可能です。
ただし、延長が認められるのは自治体の判断によるため、必ずしも全員が延長できるわけではありません。
延長が認められる場合、最長で12ヶ月間の延長が可能です。これは、市区町村が「延長によって就職の見込みがある」と判断した場合に限られます。
リセット方法については、就職後に退職して再び支援を受けたい場合や、退所後に一定期間が経過して再利用する場合です。
リセットが認められると、再び2年間の支援を受けることが可能になりますが、これも自治体の判断に委ねられるため、事前に市区町村の障害福祉課に相談することが重要です。
延長を希望する場合は、まず市区町村の障害福祉課に申請を行う必要があります。
自治体によっては1年6ヶ月あたりで申請書がご自宅に郵送されるケースもあります。
申請書の内容は、就職が難しかった理由や、延長によって就職の見込みが立つと考えられる理由を明示する必要があります。
就職活動中や面接、実習中の場合はその実習がダメだった場合などはどう活動していくのかなども記載します。申請書には継続後の1年間どう過ごすのかが記載されている必要があります。
家庭の事情や体調の不調など、やむを得ない事情や就職活動の選考待ちが延長の理由として認められることが多いです。
厚生労働省は、就労移行支援の延長に関するガイドラインを設けています。
このガイドラインに従って自治体が判断を行うため、延長を希望する場合はガイドラインを確認し、それに基づいて適切な手続きを行うことが大切です。
リセットを希望する場合も、同様に自治体に申請を行う必要があります。
リセットの条件としては、過去に一定期間働いていたことや、再就職に向けた支援が必要とされる場合が多いです。
リセットが認められると、再び2年間の支援を受けることができます。
リセットが認められるケースとしては、就職後に長期間勤務したが再発や退職が避けられなかった場合、再度の就職が可能であると見込まれる場合などが挙げられます。
こちらも、自治体ごとに判断が異なるため、事前に相談を行うことが推奨されます。
ここからは実際に就労移行支援を利用して、就職後活躍されている方の事例を紹介いたします。
今回は短期間利用された方と長期間利用された方をご紹介いたします。
参考になれば幸いです。
この方は20代の利用者は、わずか3か月で希望する職に就職できました。
この方は元々IT業界での就労経験がありましたが、精神疾患のために退職を余儀なくされていました。
その後、就労移行支援で支援を受けながら自己理解を深め、ITスキルを再強化することで、再度就職することができました。
自身の得意不得意や、障害の特性を理解することで体調を崩す予兆を上司にうまく伝えることができ、いまではITスキルを駆使し、活躍されています。
この方が企業に求めた配慮は指示をチャットでもらうことでした。
前職では口頭での指示が多く、優先順位がわからなくなり相談をどうすれば良いかわからず体調を崩すことになっていたのです。
新しい職場ではチャットの履歴から完了・進行中が伝えやすく、キャパ内で仕事ができていることがいいリズムとなり活躍できているそうです。
短い期間ではありましたが、通所初期から週に5日以上の通所ができており、自分の特性を理解したいと前向きな行動が早期に就職できた秘訣ではないでしょうか。
別の方の事例では、精神疾患の影響で長期間の職場復帰が難しかった40代の方が、2年の支援期間をフルに活用し、最終的に定着支援のサポートを受けながら安定した職に就職したケースがあります。
この方は定期的な支援員との面談を重ね、就職後もサポートを受けながら職場に定着することができました。
もともと仕事ができる方で、性格の良さから周りから頼りにされていて、多くの仕事を任されていたそうです。
自分では疲れている自覚は全くなかったそうです。
ですが、ある時上司と意見が分かれて対立してしまい、そこからうつ状態になり仕事に支障が出始めたそうです。
就労移行支援を利用された2年間で特に力を入れていた内容は課題の分離でした。
元々責任感が強かったため、人に任せることが少なく問題が起きた時は自分の責任と考えすぎる傾向があったため、
自分を責めないことを第一に今後のキャリアを見直すことができました。
2年間は長いようですが、この方は移行支援を利用できた2年間はとても有意義だったと言っていました。
入所当時は体調や生活リズムは整っていても、心の状態が整っていなかったため以前の職場関連のニュースや情報が入ってくるだけで疲弊している様子でした。
そこからマインドフルネスやヨガを取り入れることで、少しずつ元気になっていきました。
今では人材育成の仕事で生き生きと働かれています。
利用期間をどう過ごせば就職しやすいのでしょうか?
就労移行支援は18歳から65歳まで様々な方が通われています。
利用の仕方も週1日の通所の方や、在宅で利用されている方、週5日通われている方など利用の仕方も様々です。
ここでは就労移行支援で過ごす期間を無駄にしないための注意点をご紹介します。
利用期間中は、積極的に自己理解を深め、就職に必要なスキルや経験を積むことが重要です。
具体的には、職場体験や企業インターンに参加することで、実際の働き方や職場環境を理解することができます。
また、就職支援員と定期的に相談することも、就職成功への重要なステップです。
就労移行支援を利用して就職される方の共通点は、体調や感情の変化を、支援員に報告をよくされる方が多い印象です。
毎日聞き取りの時間があるのですが、その時に自分の体調や感じたこと、不安なことをそのまま伝えることで専門的なアドバイスを受けることができます。
逆に、就労移行支援を利用中に感情に蓋をしてしまうと、就労移行支援を利用することで体調を崩してしまわれるケースなどもあるので注意が必要です。
まずは支援員を最大限活用してみましょう。
就職活動を進める上でのコツは、早期に具体的な目標を設定し、それに向けた行動を計画的に進めることです。
支援員と相談しながら、履歴書の作成や面接対策を積極的に行うことが、就職成功の鍵となります。
就職活動時の必要書類は履歴書と職務経歴書が一般的ですが、障害者雇用での就労を目指す場合、
ナビゲーションシートや、就労パスポートなど、障害の配慮事項などをまとめた書類を企業に提出します。
これらの準備を早い段階から始め、体調が悪い時や、体調が良い時はどんな時か?などを少しずつでも書き溜めていくと作成がしやすくなります。
就職段階に入ったタイミングで作成を始めるとなかなか上手くいかないことがほとんどですので、日頃から支援員と相談し作成していくのが就職活動を進めるコツです。
ナビゲーションシートや就労パスポートを作成するメリットは
このような点があります。
1人では作成が難しいので、ぜひ就労移行支援の支援員と一緒に作成しましょう。
就労移行支援の利用期間や就労定着支援についてよくある質問をまとめました。
Q: 就労移行支援を途中でやめてしまいました。残りの期間はどうなりますか?
A: 残っている利用期間を次回利用時に使用することができます。就労移行支援をやめた時は自治体に伝え、期間を停止してもらいましょう。
Q: 今通っている就労移行支援をやめて他の事業所に変更できますか?
A: 利用期間内は事業所を何回でも変えることができます。ただし、自治体によっては事業所を変更する理由をしっかりと答えられない場合は利用できなくなる場合があります。
Q: 就労移行支援を2年間利用しても就職できなかった場合はどうなりますか?
A: 延長が認められた場合、最長12か月間の延長が可能です。延長は自治体の判断により決まります。
Q: 就職したけれど、すぐに退職してしまった場合はどうすれば良いですか?
A: 再度利用を希望する場合、利用期間のリセットを申請することが可能です。リセットが認められれば、再び2年間の支援を受けられます。
Q: 就職後に問題が発生した場合、どのようなサポートが受けられますか?
A: 就労定着支援を通じて、就職後も職場でのトラブルやストレスに対応できるよう、定期的な面談やカウンセリングが提供されます。職場定着のための支援は、就職後6か月から3年間にわたり行われることが一般的です。
就職から6ヶ月間は利用していた就労移行支援の定着支援
6ヶ月から最大3年までは就労定着支援
3年目以降は地域障害者職業支援センターが担当となっています。
最近では企業側の担当者の方も障害についての理解を持たれている方が多くなっているため、以前と比べると配慮なども比較的受けやすい状況になっています。
Q: 就労定着支援はなぜ必要か?
A: 就労移行支援利用後6ヶ月間は今まで支援を受けていた事業所の支援員が定着をサポートしてくれるため、信頼関係ができており、相談がしやすく仕事も継続しやすいのですが、6ヶ月経過後が大事なため、就職先での信頼関係がまだ完全ではない場合に仕事を続けやすくするために就労定着支援が必要になります。
就労移行支援の利用期間や延長、リセットの条件については、個々の状況や自治体の判断に左右されますが、2年間という期間を最大限に活用することが重要です。
支援を通じて就職に必要なスキルを磨き、就職に向けて着実に準備を進めることで、安定した職場での就労を目指しましょう。
就労移行支援をうまく活用し、自分に合った職場での安定した生活を手に入れてください。
当日、ご相談者様が指定されたお時間に、
堺筋本町校・本町校・梅田校・大阪校、いずれかお近くの方をご選択の上、御越しください。
実際の見学会・説明会の風景です。
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